ジェーン・オースティン『自負と偏見』小山太一訳、新潮文庫、2014年
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昨年9月9日に英国のエリザベス二世が亡くなられました。かつて「太陽の沈まない帝国」と言われた大英帝国が解体する時代の国王でありながら、現在も56か国を擁するイギリス連邦(the Commonwealth of the Nations)の首長という立場を維持されたということは...


- 8月8日
ホメロス『イリアス』(下巻)松平千秋訳、岩波文庫、1992年
『イリアス』に似た国文学の古典を挙げるとすればやはり『平家物語』でしょうか。戦記であるという内容上の類似もさることながら、琵琶法師によって口伝で伝承されたとされることや、敗北した側がタイトルになっていることも似ています(イリアス/イリオスはトロイアの別名)。ただ読み終えた感...


- 7月8日
ホメロス『イリアス』(上巻)松平千秋訳、岩波文庫、1992年
我が国の政治文化は「和をもって尊しとなす」と言う言葉に特徴づけられているようでありながら、裏に回って人を欺くのが権力闘争の常であって、表の温厚さとは裏腹に謀略が渦巻いているというのが現実であるような気がします。現在の日本国の起源である、大政奉還・王政復古の大号令という一連の...


- 6月8日
木谷明『刑事裁判の心』(新版)法律文化社、2004年
最近、袴田事件の特別抗告を東京高検が見送り、再審が確定したというニュースが報じられました。再審が速やかに開始されて袴田さんの存命中に無罪が確定して欲しいと願わされます。冤罪事件は、地域社会で評判の良くない人物が犯人に仕立て上げられてしまうことが多いので、普通の人は自分には関...

![大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』岩波文庫、2014年 [初版1986年]](https://static.wixstatic.com/media/562563_91e32de800614ce5ae372650a01c4e43~mv2.jpg/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_90,enc_auto/562563_91e32de800614ce5ae372650a01c4e43~mv2.jpg)
- 5月8日
大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』岩波文庫、2014年 [初版1986年]
今年の3月3日に大江健三郎が亡くなられました。大江健三郎の小説は、大学生の時に短編集『奇妙な仕事』を読んだのですが、当時はその文学的価値を理解することができずに、それ以来ずっと読むことはありませんでした。しかし戦後日本の文壇が生んだ優れた小説家の作品を、この機会に読むべきで...


- 4月8日
ダンテ『神曲』(天国篇)平川祐弘訳、河出文庫、2009年
今週 ‘Everything Everywhere All at Once’ を観ました。今年のアカデミー賞の7部門を受賞した作品です。この映画は、アジア人で初めて主演女優賞を受賞したミシェル・ヨー扮するエヴリンという中国出身の女性が主人公です。彼女は中国系アメリカ人の男性...


- 3月8日
ダンテ・アリギエーリ『神曲』(地獄篇・煉獄篇)平川祐弘訳、河出文庫、2008-09年
1996-98年にアメリカの神学校に留学した時のことでしたが、教会史専攻の修士課程の科目で「中世のキリスト教」というクラスを受講しました。このクラスのあるセッションでダンテの『神曲』が取り上げられたことがありました。受講していた学生は15名前後だったかと思います。先生が「『...

![坂口ふみ『〈個〉の誕生: キリスト教教理を作った人々』岩波現代文庫、2023 [初版1996]年](https://static.wixstatic.com/media/562563_ca703fe59e8f48338d14c448cfca58d2~mv2.jpg/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_90,enc_auto/562563_ca703fe59e8f48338d14c448cfca58d2~mv2.jpg)
- 2月8日
坂口ふみ『〈個〉の誕生: キリスト教教理を作った人々』岩波現代文庫、2023 [初版1996]年
今回紹介する『〈個〉の誕生』は古代教父学・古代キリスト教教理史の分野で優れた貢献をされたと評価されている本です。微に入り細を穿つことの多い古代キリスト教教理史は、思想や神学に関心のある者であっても、使われている用語の難解さや、それを使用している神学者たちのニュアンスの微妙な...


- 1月8日
中島耕二編『タムソン書簡集』日本基督教団新栄教会タムソン書簡集編集委員会訳、教文館、2022年
この本は、個人的に大変お世話になった方から昨年プレゼントされました。それで主に朝、聖書を読んだ後に、少しずつ読むようになりました。この本は、単に日本キリスト教史の資料として価値があるというだけではなくて、キリスト教会で奉仕する者に慰めと励ましを与える本でもあると感じられるか...


- 2022年12月8日
チャールズ・ディケンズ『クリスマス・ブック』小池滋・松村昌家訳、ちくま文庫、1991年
毎年クリスマスの時期になると、クリスマス礼拝で何を話すかは悩みの種の一つです。恐らく多くの牧師たちが一度は例話に使ったことがある「鉄板ネタ」とも言えるのが、ディケンズの「クリスマス・キャロル」ではないでしょうか。私も最初に奉仕した教会のクリスマスで、「クリスマス・キャロル」...


- 2022年11月8日
山口淑子・藤原作弥『李香蘭 私の半生』新潮文庫、1990年
最近はK-Popアイドルがグラミー賞を受賞し、『イカゲーム』がエミー賞を獲得するなど、エンターテイメントの世界で隣国の躍進が目立っています。韓国は1990年代の通貨危機の後、エンターテイメント産業による外貨獲得の努力が国策として進められるようになり、音楽や映像ソフトの輸出を...


- 2022年10月8日
ヴィクトール・ユゴー『レ・ミゼラブル』(第5巻)西永良成訳、平凡社、2020年
『レ・ミゼラブル』の第五巻は、1832年の6月暴動におけるバリケード戦で負傷したマリユスの命をジャン・バルジャンが救い、怪我から回復したマリユスがコゼットと結ばれ、幸福となった二人を見届けた後で、ジャン・ヴァルジャンが死を迎えるという物語です。...


- 2022年9月8日
ヴィクトール・ユゴー『レ・ミゼラブル』(第3-4巻)西永良成訳、平凡社、2020年
『レ・ミゼラブル』の作者であるヴィクトール・ユゴーの葬儀は1885年にフランス共和国の国葬として執り行われたそうです。それはユゴーの思想と生涯が、19世紀のフランスという国を体現する面があったからでしょう。彼はボナパルト主義者の父親と王党派の母親の間に生まれました。フランス...


- 2022年8月8日
山本章子『日米地位協定: 在日米軍と「同盟」の70年』中公新書、2019年
8月には広島・長崎の原爆の日と終戦記念日があるため、第二次世界大戦における日本の敗戦と、この戦争による被害と加害の歴史に向き合うことになります。今年は、2月に始まったウクライナ戦争が現在も続いており、平和の尊さや核兵器の非人道性を訴えることが、例年以上に切実であると感じられ...


- 2022年7月8日
ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』(第一巻・第二巻)西永良成訳、平凡社、2019-20年
毎週二回、高齢の母の様子を見るために、取手の住居と実家を往復しているのですが、その時、自分の仕事や研究などのために、本や辞書類を持ち歩いています。それでバックパックを背負い、トートバックを持ち、キャスター付きのケースを転がしながら移動します。そういう大荷物で、二回ほど町中華...


- 2022年6月8日
ロブ・ライナー監督『ア・フュー・グッド・メン(A Few Good Men)』コロンビア映画、1992年
忘れられない裁判映画が私には三つあります。 一つ目はヘンリー・フォンダ主演の『十二人の怒れる男』です。アメリカの陪審員制度に基づく白黒映画でした。法廷における被告人への質問や証人への質問などは一切描かれず、殺人事件の評決を法廷に提出するために、夏のある暑い日に、12人の陪審...


- 2022年5月8日
G. K. チェスタトン『正統とは何か』(新版)安西徹雄訳、春秋社、2019年
以前このコーナーでC. S. ルイスの自伝『喜びのおとずれ』を紹介しましたが、ルイスがキリスト教信仰を回復する上で重要な役割を果たしたのが、ギルバート・キース・チェスタトンの著作でした。恐らくルイスは、今回取り上げる『正統とは何か』(Orthodoxy)も読んでいたことでし...


- 2022年4月8日
A. リンドグレーン『名探偵カッレとスパイ団』岩波少年文庫、1960年
今回は小学生時代に読んだ一冊を紹介します。先日朝日新聞土曜版Beの特集記事「今こそ読みたい」のコーナーで、児童文学についての読者のランキングが発表されていました。それによると、子供向け小説で今こそ読みたい作品の第一位はサン=テグジュペリ『星の王子様』(763票)、第二位はミ...


- 2022年3月8日
J. S. ミル『自由論』塩尻公明・木村健康訳、岩波文庫、1971年
北京オリンピック終了直後に、懸念されていたロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってしまいました。一日も早く、ウクライナに平和が回復されるようにお祈り致します。 プーチン大統領の頭の中では、2003年にアメリカがイラク戦争をすることが許容されたなら、今回のウクライナ侵攻も許容さ...


- 2022年2月8日
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(第三・四巻、エピローグ別巻)亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、2007年
先月に続いて『カラマーゾフの兄弟』第三巻からエピローグまでを紹介します。一部ネタバレを含みますので、ご自分でお読みになる方は、今回はスキップして頂ければと思います。 第三巻は、全体としては、二人の父の死についての物語です。一人の父とはゾジマ長老のことであり、もう一人はフョー...
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