5月8日G. K. チェスタトン『正統とは何か』(新版)安西徹雄訳、春秋社、2019年以前このコーナーでC. S. ルイスの自伝『喜びのおとずれ』を紹介しましたが、ルイスがキリスト教信仰を回復する上で重要な役割を果たしたのが、ギルバート・キース・チェスタトンの著作でした。恐らくルイスは、今回取り上げる『正統とは何か』(Orthodoxy)も読んでいたことでし...
4月8日A. リンドグレーン『名探偵カッレとスパイ団』岩波少年文庫、1960年今回は小学生時代に読んだ一冊を紹介します。先日朝日新聞土曜版Beの特集記事「今こそ読みたい」のコーナーで、児童文学についての読者のランキングが発表されていました。それによると、子供向け小説で今こそ読みたい作品の第一位はサン=テグジュペリ『星の王子様』(763票)、第二位はミ...
3月8日J. S. ミル『自由論』塩尻公明・木村健康訳、岩波文庫、1971年北京オリンピック終了直後に、懸念されていたロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってしまいました。一日も早く、ウクライナに平和が回復されるようにお祈り致します。 プーチン大統領の頭の中では、2003年にアメリカがイラク戦争をすることが許容されたなら、今回のウクライナ侵攻も許容さ...
2月8日ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(第三・四巻、エピローグ別巻)亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、2007年先月に続いて『カラマーゾフの兄弟』第三巻からエピローグまでを紹介します。一部ネタバレを含みますので、ご自分でお読みになる方は、今回はスキップして頂ければと思います。 第三巻は、全体としては、二人の父の死についての物語です。一人の父とはゾジマ長老のことであり、もう一人はフョー...
1月7日ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(第一巻・第二巻)亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、2006年今月と来月の二回にわたって『カラマーゾフの兄弟』を取り上げます。選んだ理由は、昨年、ドストエフスキー生誕200年を記念してNHKラジオ第二放送で放送されていた亀山郁夫先生の講演を聞いたからです。大学生の時に一度読んでいましたが、その講演を聞いてから、もう一度読みたくなりまし...
2021年12月8日丸山眞男『超国家主義の論理と心理』岩波文庫、2015年ちょうど80年前の今日、日本時間の1941年12月8日に、大日本帝国海軍南雲忠一中将麾下の六隻の航空母艦を中心とする機動部隊がハワイ・オワフ島の真珠湾に停泊するアメリカ太平洋艦隊の主力艦艇に対して艦載機による攻撃をしかけました。数千キロ離れた敵基地に海軍航空部隊が打撃を与え...
2021年11月8日高峰秀子『わたしの渡世日記』(上・下)、新潮文庫、2012年高峰秀子さんが亡くなられたのは2010年の年末でした。正直に言うと、それまで高峰秀子さんの主演映画は一本も観たことがなかったのですが、年明けに数本続けて鑑賞しました。『浮雲』『放浪記』『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾年月』などです。さらに言えば、日本映画にはあまり関心を持っ...
2021年10月8日山室信一『キメラ: 満洲国の肖像』(増補版)中公新書、2004年 [初版1993年]今年の9月11日で、アメリカの同時多発テロ事件が発生してから20年が経ちました。その直前には、アメリカ軍のアフガニスタンからの完全撤退がなされ、数万の人々がカブール空港から脱出しようとする様子が連日報道されていたことは記憶に新しい所ではないでしょうか。そもそもアフガニスタン...
2021年9月8日宮沢賢治『銀河鉄道の夜』岩波書店、1963年昨年秋に劇場公開された『鬼滅の刃: 無限列車篇』をご覧になった方もおられることでしょう。蒸気機関車と客車に取りついた手強い鬼に、竈門炭二郎を始めとする剣士たちが立ち向かい、乗客のいのちを救おうとするお話です。列車は夜の田園地帯を走るのですが、原作者は松本零士の名作『銀河鉄道...
2021年8月8日石田勇治『過去の克服: ヒトラー後のドイツ』白水社、2014年この本の中にも登場しますが、1970年代に旧西ドイツの首相であったヘルムート・シュミット氏は、かつて日本の新聞のインタビューに答えて、日本人に助言を下さったことがありました。シュミット首相は、日本が近隣諸国に友人を持つべきだと話しておられました。私は、この元首相の助言は、現...
2021年7月8日大堀壽夫『認知言語学』(第六版)東京大学出版会、2020年かつて最初に神学教育を受けた神学校は、神学の諸分野の中でも、特に聖書学と聖書語学の教育に力を入れていました。教師陣の中には言語学の成果を聖書学研究に応用する先生もおられ、クラスで言語学の本が紹介されていました。それでジョン・ライアンズ『言語と言語学』近藤達夫訳(岩波書店、1...
2021年6月8日中野好夫・新崎盛暉『沖縄戦後史』岩波新書、1976年; 若泉敬『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス: 核密約の真実』(新装版)文藝春秋社、2009年1945年6月23日は沖縄戦での日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日です。また来年の5月15日は沖縄返還50周年にあたります。そんなこともあって、今回は沖縄に関連する本を2冊取り上げることにしました。 『沖縄戦後史』は敗戦後から返還までの沖縄の戦後史を、沖縄の革新政党や...
2021年5月7日斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書、2020年今、若いマルクス主義経済学者の書いたこの本が25万部もの売り上げを記録するベストセラーになっているそうです。昨年の秋から書店に並んでいることは知っていましたが、表紙の写真の著者の表情が気難しそうな印象であったこともあり、購入するのをためらっていました。けれども先々週インター...
2021年4月8日夏目漱石『三四郎』岩波文庫、1938年夏目漱石に興味を持ったのは、高校三年の現代文の教科書に載っていた「私の個人主義」という文章がクラスで取り上げられた時からでした。現代文の先生からは漱石の生涯について熱を込めて教えて頂いたような気がします。ちょうど新しい千円札の肖像が伊藤博文から漱石に切り替わった時期でもあり...
2021年3月8日柳 美里『JR上野駅公園口』河出文庫、2020年2021年の3月は、東日本大震災から10年が経過する月ですから、震災に関連する本を取り上げるべきだと思いました。この本の英訳は、昨年全米図書賞の翻訳文学部門の受賞作品に選ばれました。今まで柳美里さんの小説を読んだことはなかったのですが、なぜ評価されたのかを知りたいと思い、読...
2021年2月8日宇田達夫『ある朝の散歩: 祈りの甦るまで』一麦出版社、2010年この本は、もとは私の父の本棚にあったものです。父は退職後、作業所を運営するNPO法人の会計のボランティアをするようになりました。その団体を通して、宇田達夫先生とお会いする機会があり、先生の著書を入手したのだと思います。 本書には、宇田先生のご自身の入信と信仰生活の経験や牧師...
2021年1月8日アルベール・カミュ『ペスト』宮崎嶺雄訳、新潮文庫、1969年しばらく前に公開された映画に「コンテイジョン」という映画がありました。中国本土の養豚場でこうもりから豚に感染したウィルスが、香港の料理店を通じて人に感染し、パンデミックが起きるというストーリーでした。この映画は、Covid...
2020年12月8日E. H. ノーマン『クリオの顔: 歴史随想集』大窪愿二編訳、岩波文庫、1986年今回はエーリッヒ・ノーマンの『クリオの顔』を紹介します。私の本棚にある文庫本の最後のページには鉛筆で1990年12月7日という日付が書いてあります。通読してから30年が経つわけです。 エーリッヒ・ハーバート・ノーマンは、カナダ人の歴史家、外交官でした。ケンブリッジ大学で英国...
2020年11月8日Goose House, ‘Flight’, gr8records (Sony Music), SRCL-9724今月は本棚にあるCDを紹介します。2年前の11月にGoose Houseは事実上解散しました。私は遅れてきたファンです。今までも時折YouTubeで彼らの演奏を視聴したことはあったように思いますが、しばらく前に、たまたま彼らの歌うCover曲『明日があるさ』を見て、彼らの才...
2020年10月8日C. S. ルイス『銀のいす』瀬田貞二訳、岩波少年文庫、1986年ちょうど一年前に、C. S. ルイスの『喜びのおとずれ』を紹介しましたが、今回、同じ作者の『銀のいす』を紹介します。子供の頃、ナルニア国物語を読んで育ったという方は少なくないと思いますが、私もその一人でした。私が一番好んで読んだのは『カスピアン王子の角笛』でした。これは中世...