G. K. チェスタトン『正統とは何か』(新版)安西徹雄訳、春秋社、2019年以前このコーナーでC. S. ルイスの自伝『喜びのおとずれ』を紹介しましたが、ルイスがキリスト教信仰を回復する上で重要な役割を果たしたのが、ギルバート・キース・チェスタトンの著作でした。恐らくルイスは、今回取り上げる『正統とは何か』(Orthodoxy)も読んでいたことでし...
A. リンドグレーン『名探偵カッレとスパイ団』岩波少年文庫、1960年今回は小学生時代に読んだ一冊を紹介します。先日朝日新聞土曜版Beの特集記事「今こそ読みたい」のコーナーで、児童文学についての読者のランキングが発表されていました。それによると、子供向け小説で今こそ読みたい作品の第一位はサン=テグジュペリ『星の王子様』(763票)、第二位はミ...
J. S. ミル『自由論』塩尻公明・木村健康訳、岩波文庫、1971年北京オリンピック終了直後に、懸念されていたロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってしまいました。一日も早く、ウクライナに平和が回復されるようにお祈り致します。 プーチン大統領の頭の中では、2003年にアメリカがイラク戦争をすることが許容されたなら、今回のウクライナ侵攻も許容さ...
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(第三・四巻、エピローグ別巻)亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、2007年先月に続いて『カラマーゾフの兄弟』第三巻からエピローグまでを紹介します。一部ネタバレを含みますので、ご自分でお読みになる方は、今回はスキップして頂ければと思います。 第三巻は、全体としては、二人の父の死についての物語です。一人の父とはゾジマ長老のことであり、もう一人はフョー...
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(第一巻・第二巻)亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、2006年今月と来月の二回にわたって『カラマーゾフの兄弟』を取り上げます。選んだ理由は、昨年、ドストエフスキー生誕200年を記念してNHKラジオ第二放送で放送されていた亀山郁夫先生の講演を聞いたからです。大学生の時に一度読んでいましたが、その講演を聞いてから、もう一度読みたくなりまし...
丸山眞男『超国家主義の論理と心理』岩波文庫、2015年ちょうど80年前の今日、日本時間の1941年12月8日に、大日本帝国海軍南雲忠一中将麾下の六隻の航空母艦を中心とする機動部隊がハワイ・オワフ島の真珠湾に停泊するアメリカ太平洋艦隊の主力艦艇に対して艦載機による攻撃をしかけました。数千キロ離れた敵基地に海軍航空部隊が打撃を与え...
高峰秀子『わたしの渡世日記』(上・下)、新潮文庫、2012年高峰秀子さんが亡くなられたのは2010年の年末でした。正直に言うと、それまで高峰秀子さんの主演映画は一本も観たことがなかったのですが、年明けに数本続けて鑑賞しました。『浮雲』『放浪記』『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾年月』などです。さらに言えば、日本映画にはあまり関心を持っ...
山室信一『キメラ: 満洲国の肖像』(増補版)中公新書、2004年 [初版1993年]今年の9月11日で、アメリカの同時多発テロ事件が発生してから20年が経ちました。その直前には、アメリカ軍のアフガニスタンからの完全撤退がなされ、数万の人々がカブール空港から脱出しようとする様子が連日報道されていたことは記憶に新しい所ではないでしょうか。そもそもアフガニスタン...
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』岩波書店、1963年昨年秋に劇場公開された『鬼滅の刃: 無限列車篇』をご覧になった方もおられることでしょう。蒸気機関車と客車に取りついた手強い鬼に、竈門炭二郎を始めとする剣士たちが立ち向かい、乗客のいのちを救おうとするお話です。列車は夜の田園地帯を走るのですが、原作者は松本零士の名作『銀河鉄道...
石田勇治『過去の克服: ヒトラー後のドイツ』白水社、2014年この本の中にも登場しますが、1970年代に旧西ドイツの首相であったヘルムート・シュミット氏は、かつて日本の新聞のインタビューに答えて、日本人に助言を下さったことがありました。シュミット首相は、日本が近隣諸国に友人を持つべきだと話しておられました。私は、この元首相の助言は、現...