Goose House, ‘Flight’, gr8records (Sony Music), SRCL-9724


 今月は本棚にあるCDを紹介します。2年前の11月にGoose Houseは事実上解散しました。私は遅れてきたファンです。今までも時折YouTubeで彼らの演奏を視聴したことはあったように思いますが、しばらく前に、たまたま彼らの歌うCover曲『明日があるさ』を見て、彼らの才能に驚き、続けざまに彼らの動画を閲覧し、すっかりはまってしまいました。


 Goose Houseについて一応説明すると、当初Play You. Houseというシェア・ハウスに集まった若いシンガー・ソング・ライターたちが、ストリーミング・ライブやYou Tubeへの投稿を行っていました。このプロジェクトは東日本大震災のため終了しますが、2011年4月からシェア・ハウスの名前をGoose House (雁の家)と改め、Play You. Houseに集っていたメンバーも含む7名前後の若者たちが活動を継続し、やがてCMやアニメの主題歌に楽曲を提供し、大規模な全国ツアーを開催するまでに活動を拡げ、合計8枚のアルバムを発売しました。4枚目以降は全てオリコン・アルバム・チャートで20位以内にランクインしています。残念ながら2018年に残っていた6名のメンバーのうち5名が卒業し、その内4名はPlay Gooseというユニットを立ち上げたため、事実上の解散となったようです。


 今回紹介しているCD『Flight』は2018年4月にリリースされたGoose Houseの最後のアルバムです。特に「春の涙を」と「笑顔の花」という二つの曲が気に入りました。「春の涙を」を聴いていると、この時、既に彼らは解散を決意していたようにも感じられ、ファンに向けた別れのメッセージを歌っているような気もします。このアルバムに収録されている曲ではありませんが、ファースト・アルバムの「Sing」もとても素晴らしい楽曲だと思います。彼らの歌は、私のように古い歌謡曲やJpopに慣れた人間には、明確なストーリー性に欠けると感じることもあります。それは彼らの書く詩が、SNSを通じたファンとの交流を通して生み出されていた面があったからでもあるような気がします。その輪の中にいた人たちは、きっと彼らが紡ぎ出す、若者らしい新鮮な言葉に心動かされたのではないでしょうか。


 YouTube上の彼らのパフォーマンスを見てまず魅かれるのは、彼らが実に楽しそうに笑顔で歌っている姿です。動画に書き込みをする人たちも皆このことを称賛していました。彼らが歌っていたのは殆ど日本語の歌であったにもかかわらず、動画の書き込みには世界中からコメントが寄せられていました。言葉がわからなくても、彼らのハーモニーと笑顔で歌う姿に、世界中の人々が感動しているというのは誇らしくさえありました。


 彼らは一見普通の若者のようですが、そんな彼らがあらゆるジャンルの音楽をGoose House流にアレンジしながら歌っていました。しかも私の好きなアコースティックな楽器を中心にしており、表現方法に制約があるのに、むしろそれを逆手にとるように創造的な音の表現を生み出していました。演奏技術も(特に斎藤ジョニーさんは傑出していますが)素晴らしいと思います。


 自然であるのは、彼らの笑顔や楽器だけではありません。収録の際にマイクは歌唱者の前ではなく、部屋の離れた場所、多分カメラの近くに一つだけ置かれていたようです。動画の視聴者は、何か同じ部屋にいる人の生演奏を聴くような感覚で視聴することができたのです。YouTube上でも、加工された音声を聞かせる動画が多いと思いますが、彼らの歌はそうではなく、彼ら自身の声を聴かせてくれるのです。歌の技術は竹渕慶さんに圧倒的な力量を感じますが、他のメンバーの声も魅力的です。


 彼らの歌唱の最大の特徴は、一人がフルコーラスを歌うのではなくて、メンバーが分担してフレーズを歌うスタイルにあったと思います。一人のメンバーが歌っているときには、他のメンバーが別のパートを歌って一人のメンバーをサポートし、そのようにハーモニーが作られていました。彼らは歌を通して連帯や友情を表現していたのです。これも動画の視聴者が感動する理由だったのではないでしょうか。


  Goose Houseというユニットが、東日本大震災の直後に誕生したということも重要なことだったように感じます。彼らのOriginal曲の多くが友情を歌っているということは、彼らの出発点と関係があったような気がします。そして2011年から2018年まで、YouTube上で彼らの音楽を視聴してきた方々は、震災と原発事故後の日々に、笑顔とユーモアに満ちたパフォーマンスとともに、連帯と友情を訴えるメッセージからも勇気づけられ、励まされたのだと思います。


 Goose Houseの代表作である『オトノナルホウヘ→』の中で、ワタナベシュウヘイさんが歌うフレーズに「息がつまるこんな世の中で出会えたんだ」という言葉があります。この短いフレーズにはGoose Houseのメンバーとファンとの出会いと交流の素晴らしさが表現されていると思います。でも同時にこのフレーズには閉塞感への不満も吐露されています。日本の社会には、若い才能が自由に飛躍するのを妨げる障壁が存在していると感じられるのでしょうし、日本の諸制度が、SNSのようなメディアの中で育っている若者たちのスピードについていけなくなっているのかもしれません。


 彼らの姿を見ながら、思い起された旧約聖書の言葉を引用します。

「兄弟が共に住むことは、何という幸せ、何という麗しさ。」(詩篇133:1)

女性のメンバーたちがどこかの動画で話しておられましたが、楽曲の製作や演奏の準備のためにシェア・ハウスに泊まり込んで、意見を交わしながら過ごしたこともあったそうです。才能が融合されて創造性豊かな作品が生み出されるために絶好の環境だったのでしょう。Goose Houseというシェア・ハウスは、若手のMusicianを育てるために作られた小さなプラットフォームだったと思います。才能が開花するのを手助けするincubatorの役割を果たしたのでしょう。SNSの発達によってこのような可能性が開かれていることに感慨を覚えます。


 …などと、長々と書いてしてしまいましたが、こういうことを書くこと自体、余計なことと思われるかもしれませんね。

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